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白洲正子

 これは江戸時代の着物で、「秋野に月文様肩着」という物だそうです。写真の多い新潮社の蜻蛉の本の「草づくし」という白洲正子さんの本の中に載っていました。白洲さんは『草とはささやかなもの、はかないもの、見栄えのせぬもの、繁くあるもの、粗略なもの・・・要するに何でもないものが草』と書かれてらっしゃいますが、私の思いとぴったりでした。そして私はそういう草が一番好きです。堂々と咲く薔薇や誰でも知っている花屋の花もとても綺麗だとは思いますが、道ばたに咲いている名前も知らない花が生き生きしているのが大好きです。可憐で、草抜きには全部引っこ抜かれてしまう草たちですが、何とも健気でか細いのに力があって、よくよく見ると花なんかつけていたりして、私は好きです。例えばこの着物のように桔梗以外詳しく描かれない草たち。見ていると幸せな気持ちになります。農家の方には呆れられる話ですが、ゆっくり散歩をすると見付けられて、なかなかよいものです。持って帰ろうとすると枯れてしまうのも好きです。花はこっちが出向いて見る物だと思うのでした。どんな環境に咲いているか、周りには何があるか、隣には何が咲いているか等、観察するのも楽しいものです。

 白洲正子さんについては資料が多すぎて、私も美術品は好きですが、草花についての所をつまみ食いして(それも沢山ありますが)、又何時かご紹介したく思います。博識でいらっしゃって,直ぐ能や和歌が出てくるので中々進みませんが・・・。